ピナ・バウシュ『カーネーション』(2017再演)

演出・振付ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踏団『カーネーション』2017年3月16日~19日、さいたま芸術劇場大ホール。

 1982年初演、1989年に横浜で日本初上演。35年も前の作品だが、冷戦の崩壊以前の時代の作品だと感じるようなところはひとつもない。すごく普遍的な、そして人間的な作品なのである。なんだかよく言えないが、観ているうちに親せきの家に一同が会しているような、妙な一人感と安心感、しばらく会っていない親せきとの微妙な距離感を感じて、観終わったときにはなんとも愛おしさが残ってつい繰り返し振り返って確かめたくなるような……。

 これをダンス公演と呼んでいいのかも分からない。舞台に立つダンサーたちは、みな何年も会っていない親戚か幼なじみのような錯覚にとらわれる。劇場のダンス・プロデューサーの佐藤まいみさんによれば、1989年に横浜に呼んで上演してもらったときとも違った印象を残す舞台となったようで、ピナ・バウシュを失っても演じる者がいる限りその人たちの新たな個人史やパーソナリティによって更新されて精彩を放つ舞台となっている。

 舞台に敷きつめられたカーネーション。その上を、自分もゆっくりと歩いている、どこまでもどこまでも歩いているような、そんな浮遊感に頭の中が満たされた。とても明るい気分で劇場を後にする。

(2017年3月16日鑑賞)

 

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